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大阪地方裁判所 昭和48年(ワ)5924号 判決 1975年1月30日

原告

前田広司

被告

松島こと姜達寿

ほか一名

主文

一  被告姜達変は原告に対し金一、一〇〇、〇四三円およびこれに対する昭和四六年六月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告姜達変に対するその余の請求および被告姜達寿に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用中、原告と被告姜達変との間に生じたものは、これを三分し、その二を原告、その余を同被告の各負担とし、原告と被告姜達寿との間に生じたものは、これをすべて原告の負担とする。

四  この判決は一項にかぎり仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告らは連帯して原告に対し金二、七九〇、六三四円およびこれに対する昭和四六年六月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  1項につき仮執行宣言

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二請求原因

一  事故

原告は、つぎの交通事故により傷害を被つた。

1  日時 昭和四六年六月一〇日午後九時二五分ころ

2  場所 和泉市葛ノ葉町一〇〇番地先路上

3  加害車 普通乗用自動車(泉五め二九八三号)

運転者 被告達変

4  被害者 原告

5  態様 気を失つて路上に倒れ、通りがかりの小林宇三部(以下「訴外人」という。)に救助されようとしていた原告を西から東に向つて進行して来た加害車が轢いた。

二  責任原因

1  運行供用者責任(自賠法三条)

被告達寿は、加害車を保有し、自己のため運行の用に供していた。

2  使用者責任(民法七一五条一項)

被告達寿は、その営む事業のため、被告達変を雇用し、同被告が被告達寿の業務の執行とし加害車を運転中、つぎの3記載の過失により本件事故を発生させた。

3  一般不法行為責任(民法七〇九条)

被告達変は、本件事故当時雨中の夜間で前方の見透しが悪い道路上を脇見をしながら加害車を運転進行していた過失により、前記のように気を失つて路上に倒れ、訴外人に救助されようとしていた原告らの発見が遅れ、訴外人に衝突してこれを跳ね飛ばすとともに、さらに原告を轢過するに至つた。

三  損害

1  傷害、治療経過等

(一) 傷害

脳震盪症、頭部、顔面挫傷および擦過傷、左上肢打撲擦過傷、左下足関節部打撲擦過傷、右肩胛骨々打、右第三、四、五肋骨々折、第一、四腰椎圧迫骨折、脊髄損傷

(二) 治療経過

昭和四六年六月一〇日から同年八月一一日まで六二日間奥村病院に入院

翌一二日から昭和四七年七月末日まで二〇五回イイノ医院に通院

(三) 後遺症

局部の頑固な神経症状

2  損害額

(一) 治療費 金四二六、〇五〇円

前記奥村病院における入院治療費として、右金額を要した。

(二) 入院雑費 金一八、六〇〇円

前記六二日間の入院に伴う雑費として、一日金三〇〇円の割合による右金額を要した。

(三) 入院付添費 金七四、四〇〇円

前記入院中の六二日間妻が付添看護にあたり、一日金一、二〇〇円の割合による右金額の付添看護費用相当損害を被つた。

(四) 休業損害 金八九六、〇〇〇円

原告は、大正一〇年三月一六日生で、事故当時日軽アルミ株式会社に勤務し、工員として稼働し、一か月金六四、〇〇〇円の収入を得ていたが、前記受傷により、昭和四六年六月一一日から昭和四七年七月末日まで一四か月間休業を余儀なくされ、その間金八九六、〇〇〇円の収入を失つた。

(五) 後遺障害による逸失利益 金九二三、五九六円

原告は、前記後遺障害のため、その労働能力を一四パーセント喪失するに至つたが、それは、昭和四七年八月一日から就労可能なほゞ六三才までの向う一一年間継続し、その間右労働能力喪失率に応じた減収を招くものと考えられるから、この逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、金九二三、五九六円とする。

(六) 慰藉料 金一、七七〇、〇〇〇円

本件事故の態様、原告の被つた傷害の部位、程度、治療の経過、期間、後遺障害の内容、程度、その他諸般の事情によれば、原告の慰藉料額は、右金額とするのが相当である。

(七) 弁護士費用 金二五〇、〇〇〇円

原告は、本訴の提起、追行を弁護士に委任し、その費用、報酬として右金額を支払う旨約諾している。

四  損害の填補

原告は、つぎのとおり支払を受けた。

1  自賠保険から 金八一六、〇〇〇円

2  社会保険から 金五六二、〇一二円

3  被告達変から 金一九〇、〇〇〇円

五  結論

よつて、原告は、被告らに対し本件事故に基づく損害の賠償として、金二、七九〇、六三四円およびこれに対する事故当日の昭和四六年六月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。

第三答弁および主張

一  答弁

請求原因一項の事実は認める。

同二項の事実中、被告達寿において自己の営む事業のため被告達変を雇用していることは認めるが、その余の事実はすべて否認する。

請求原因三項の事実は知らない。

同四項の事実は認める。

同五項は争う。

二  過失相殺

被告達変は、本件事故当時雨のなかを道路の左側を西から東に向つて毎時約三〇キロメートルの速度で加害車を運転進行しながら本件事故発生地点に接近して来たところ、本件事故発生地点を通りかかり、同所道路中心線付近に泥酔のうえ頭部を西、足部を東にして寝ている原告を発見し、これを救助するためいきなり加害車の進路直前に進出して来た訴外人を発見し、ここにこれを避けようとして、原告には気付かないままハンドルを右に切つたが、およばず、加害車左前部付近をもつて訴外人に接触するとともに、その際加害車が道路中心線を跨いで進行したことに伴い、その底部をもつて横臥中の原告にも接触するに至つたものである。

以上の次第で、被告達変は、本件事故当時雨の降る深夜の路上に原告が寝ているものとは到底予想できないところであつて、原告に対する関係においては事故につき全然過失がなかつたものであるが、かりに過失があつたと認められるとしても、本件事故につき原告側に極めて重大な過失があつたことは明らかであるから、原告の請求できる損害賠償額については、相当の減額がなされなければならない。

証拠 〔略〕

理由

一  事故

請求原因一項の事実は当事者間に争いがない。

二  責任原因

1  運行供用者責任、使用者責任

〔証拠略〕によれば、つぎのとおりの事実を認めることができる。

原告達寿は、自宅に営業所を構え、原告達変ほか二名の弟を使用し、松島土木の名称を用いて土建業を営み(被告達寿がその営む事業のため被告達変を雇用していたことは当事者間に争いがない。)、被告達変は、本件事故当時小型ダンプカーの運転手として土砂、木材の運搬業務に従事していたが、かねて昭和四五年七月二一日ころ堺泉自動車の名称を用いて中古車の修理業を営んでいる中川勇の仲介により加害者を金一三五、〇〇〇円で買受け、そのころ所有権移転登録も受け、爾来自らこれを管理し、自宅から被告達寿のもとへの通勤に使用するとともに、日曜日等の休日には、自己のレジヤーに使用するほか、時には兄弟にも貸与してレジヤー等に使用させることもあつたが、被告達寿の営業用には使用することがなかつた。

そして、被告達変は、本件事故当日は雨のため仕事を休み、夜になつて給料をもらうため、加害車を運転して被告達寿方に向つているうち本件事故を惹起するに至つた。

以上の事実が認められるのであつて、右認定の事実によれば、加害車は、被告達変が他から買受け所有権を取得して以来自ら管理使用して来たものであつて、被告達寿は、時折これをレジヤー等のため借受け使用することがあつたのみで、自己の営業用等に使用することはなかつたところ、本件事故当時も加害車は、被告達変において自己の用のため運転使用していたにすぎないものであるから、被告達寿は、加害車の運行供用者であつたものとは認め難く、他に、右認定を左右し、原告主張のように被告達寿において加害車を自己のため運行の用に供していたことを肯定するに足りる証拠はない。

また、右認定の事実によれば、被告達変は、本件事故当時自らの用のため加害車を運転していたにすぎず、他に右認定を左右し、被告達変において原告主張のように加害車を被告達寿の業務の執行につき運転していたことを肯定するに足りる証拠はない。

そうすると、被告達寿が加害車の保有者ないし被告達変の使用者であるとして被告達寿に対し本件事故による損害の賠償を求める原告の請求部分は、爾余の点について判断するまでもなく、理由がないといわなければならない。

2  一般不法行為責任

〔証拠略〕を総合すれば、つぎのとおりの事実を認めることができる。

本件事故発生地点は、東西に通ずる幅員六・六メートルの平担な道路上であつて、右道路は、その北側の幅員〇・六メートル部分を除きアスフアルトで舗装されるとともに、中心線をもつて右未舗装部分を除く北側の幅員二・三メートル部分が東行車線に、また、その余の南側の幅員三・七メートル部分が西行車線にそれぞれ分けられていたが、本件事故当時は降雨のため、路面が濡れ、かつ、本件事故発生地点付近に街路灯の設置がなかつたわけではないが、付近は概して暗く、なお、付近道路における車両の速度は、毎時四〇キロメートルに制限されていた。

被告達変は、本件事故当時前認定のように被告達寿のもとに赴くため、右道路の東行車線上を西から東に向つて毎時約四〇キロメートルの速度で前照灯を下向きにし加害車を運転進行しながら本件事故発生地点に接近して来たが、たまたま湿気で前面硝子が曇つて来たので、これを拭き取るため、前面ダツシユボード上にあつたタオルを取り上げ、これで拭こうとして視線を前方に向けたところ、加害車のほゞ正面一三・三メートルの地点に訴外人がいるのをにわかに発見し、ここに危険を感じ、直ちにこれを避けるため、ハンドルを右に切るとともに、急制動措置を講じて停車の態勢に入りつつ加害車を七メートル前進させると、道路中心線付近上に頭部を東、足部を西にそれぞれ向けるようにして倒れている原告を前方五・八メートルの地点に発見し、これをも轢過しそうになつたが、当時はもはや付加して講ずべき衝突回避措置もなく、そのまま五・八メートル前進して加害車前部バンバー左側付近をもつて訴外人に衝突し、これを前方五・三メートルの地点にまで跳ね飛ばすとともに、加害車をもつて原告を跨ぐようにしてなお二・五メートル前進させ、その間加害車前部バンバー右側付近等をもつて原告に接触するに至つた。

他方、訴外人は、右道路の北側端を東から西に向つて歩行していたところ、背後から自転車に乗つて進行して来て追抜いて行つた原告が前方三〇ないし五〇メートル付近に至つて自転車もろとも転倒し、失神状態でそのまま倒れているのを認めたが、当該前方から加害車が接近して来つつあつたので、急ぎ原告を助け起そうとして原告めがけて走り出し、前記のように加害車に衝突されるに至つた。

なお、原告は、本件事故当日の午後四時半ころチーズを肴にウイスキーポケツト瓶一本を飲み、午後六時五〇分ころ自転車に乗つてイイノ医院に内科治療を受けるため赴いたが、混んでいたので、一旦自宅に引返し、午後八時三〇分ころ再び同医院に赴き、治療を受けて帰宅中の前記午後九時二〇分ころ本件事故に会うに至つたものである。

以上の事実が認められるのであつて、右認定の事実によれば、被告達変は、本件事故当時街灯による照明が不十分で暗いうえ、雨中で前照灯による前方の照射も十分行われず、前方の見透しが良くない道路上を毎時約四〇キロメートルの速度で加害車を運転進行していたが、たまたま加害車前面硝子の曇りを拭おうとしてすぐ前に置いてあつたタオルを取り上げる一瞬の間進路前方に対する注視を怠つたため、加害車の進路前面に進出して来ていた訴外人および訴外人が当時助けようとしていた路上に横つている原告の発見が遅れ、急制動等による回避措置を講じたが、間に合わず、これに衝突するに至つたものということができるが、自動車を運転して前方の見透しの良くない路上を進行する者は、前方の注視を厳にするとともに、本件の場合のように止むを得ず前方の注視が一時不十分になるようなときには、直ちに減速してこれを補い、かりにも事故を招くことのないよう努める注意義務を負うものであるから、これによれば、本件事故は、被告達変の過失により惹起されたものといつて差支えない。

そうすると、被告達変は、民法七〇九条により本件事故による原告の損害を賠償する責任がある。

三  損害

1  傷害、治療経過等

〔証拠略〕によれば、つぎのとおりの事実を認めることができる。

原告は、本件事故の際脳震盪症、頭部、顔面挫創および擦過傷、左上肢、左下足関節部打撲擦過傷、右肩胛骨々折、右第三、四、五肋骨々折、第一、四腰椎圧迫骨折の傷害を被り、事故当日の昭和四六年六月一〇日から同年八月一一日まで六三日間奥村病院に入院して治療を受けたところ、ほゞ順調に経過し、腰部コルセツトを装着していれば歩行できるまでに恢復したので、同日をもつて右病院を退院し、翌一二日から昭和四七年七月二四日までの間二〇五回にわたり自宅近くの前記イイノ医院に通院して治療を受けていたが、そのころ右医院医師が死亡し、ここに一時治療を中断し、その後昭和四八年一月一〇日以後右医院施設を利用して開業する至つたいけだ内科に通院しながら今日に至つているが、その間右腰部から右下肢にかけての知覚鈍麻が治らず、右足をひきずるようにして歩行していたが、これが昭和四八年夏ころ以降かなり重くなり、杖を用いなければ歩行できないまでになり、今日に至つている。

以上の事実が認められる。

ところで、原告は、本件事故直前自転車もろとも路上に転倒し、失神するに至つていたことさきに認定したとおりであるから、右認定原告の受傷のうち脳震盪症は本件事故と無関係と考えられるほか、その余の受傷についても右転倒時に被る蓋然性を全く否定し去ることはできないが、前認定原告が加害車に轢かれたときの状況よりすれば、主要な受傷は本件事故により被るに至つたものと認めて差支えないであろう。

2  損害額

(一)  治療費 金四二六、〇五〇円

〔証拠略〕によれば、前認定奥村病院における入院治療のための費用として右金額を要したことが認められる。

(二)  入院雑費 金一八、六〇〇円

経験則によれば、原告の前認定六三日間の入院に伴う雑費として、一日約金三〇〇円の割合による右原告請求の金額を要したことが認められる。

(三)  入院付添費 金七四、四〇〇円

さきに認定した原告の被つた傷害の部位、程度等によれば、原告は、前認定入院期間中の六三日間付添看護を要したことが認められるところ、〔証拠略〕によれば、妻チヅルがその間付添看護にあたつたことが認められるから、経験則によれば、右付添看護により一日約金一、二〇〇円の割合による前記原告請求の金額の付添看護費用相当損害を被つたことが認められる。

(四)  休業損害 金八六九、〇六一円

〔証拠略〕によれば、原告は事故当時五〇才で、日軽アルミ株式会社に勤務し、一日中立ちづめでアルミに被膜をはるかなりの重労働に従事し、事故直前三か月間の実績によれば、一か月平均金六三、九九九円(円位未満切捨、以下同じ。)の収入を得ていたが、前認定受傷により、昭和四六年六月一一日以降休業を余儀なくされ、そのまま職場に復帰稼働できず、昭和四七年一二月一〇日かぎり自然解雇となつたことが認められる。

ところで、さきに認定した原告の被つた傷害の部位、程度、治療の経過、期間、病状の推移、その年令および従事していた職務の種類、内容等によれば、原告の右認定休業のうち原告主張の本件事故後一四か月間の休業は、本件事故と相当因果関係の範囲内にある休業と認めるに十分であり、これによれば、原告の本件事故による休業損害は、月別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、別紙計算書(一)記載のとおり金八六九、〇六一円となる。

(五)  後遺障害による逸失利益 金八九八、四八九円

さきに認定した原告の従事していた職務の種類、内容およびその後遺障害の部位、程度等によれば、原告は、前認定後遺障害のため、その労働能力を原告主張のように一四パーセント喪失し、それは、昭和四七年八月一一日から少くとも原告において稼働可能なほゞ六三才に達つするまでの一一年間継続するものと認められるから、原告のこの逸失利益を前同様方法により中間利息を控除して算定すると、別紙計算書(二)記載のとおり金八九八、四八九円となる。

(六)  慰藉料 金一、三〇〇、〇〇〇円

さきに認定した原告の被つた傷害の部位、程度、治療の経過、期間、後遺障害の内容、程度、原告において事故直前自らかなりの傷害を被つていた疑もあることその他諸般の事情によれば、原告の慰藉料額は右金額と認めるのが相当である。

3  損害の一部減額

さきに認定したところによれば、原告は、事故直前自転車もろとも転倒し、少くとも脳震盪症の傷害を被つていたものであるから、たとえ本件事故に会わなくても、ある程度の治療、休業を余儀なくされていたであろうことは明白であり、前認定諸般の事情によれば、右認定治療費、入院雑費、入院付添費、休業損害の一〇パーセント程度は、本件事故とは無関係に要したであろうと推認されるから、被告達変は、右損害についてはその九〇パーセントを賠償するをもつて足りるものである。

四  過失相殺

二項2において認定したところによれば、原告は、本件事故当時夜間雨の降つている路上に倒れ、失神横臥していて本件事故に会うに至つたものであり、原告においてこのように路上に転倒するに至つた原因は必らずしも審らかではないが、この点は原告側の過失とみるほかはなく、これに前認定被告達変の過失の程度等諸般の事情を考慮すると、過失相殺として原告の損害の三〇パーセントを減ずるのが相当であると認められる。

そうすると、被告達変において支払わなければならない損害額は、前項の合計金三、四四七、七八八円から原告において社会保険から給付を受けたものであること当事者間に争がなく、ひいては、過失相殺の対象にするのが適当でないと認める金五六二、〇一二円をさきに控除した残額金二、八八五、七七六円の七〇パーセントに相当する金二、〇二〇、〇四三円ということができる。

五  損害の填補

請求原因四項の事実は当事者間に争いがない。

よつて、原告の前記損害額からさきに控除した社会保険から給付を受けた分を除く右填補分を差引くと、残損害額は、金一、〇一四、〇四三円となる。

六  弁護士費用

原告は、被告達変に対し本件事故に基づく損害の賠償として前記金一、〇一四、〇四三円の請求権を有するところ、同被告において任意にその支払をしないため、本訴の提起、追行を弁護士に委任し、その費用、報酬として金二五〇、〇〇〇円を支払う旨約諾していることは、本件口頭弁論の全趣旨から明らかであり、本件事案の内容、審理経過、本訴請求額および認容額等に照らすと、原告が被告達変に対し賠償を求め得る弁護士費用の額は、金八六、〇〇〇円とするのが相当であると認められる。

七  結論

よつて、被告達変は、原告に対し金一、一〇〇、〇四三円およびこれに対する事故当日の昭和四六年六月一〇日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の同被告に対する本訴請求は、右の限度で正当であるから、これを認容し、同被告に対するその余の請求および被告達寿に対する請求は、理由がないから、棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小酒禮)

計算書

(一)

63,999円×13.5793=869,061円

(二)

63,999円×0.14×(113.8587-13.5793)=898,489円

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